タケハタのブログ

プログラマの生き方、働き方、技術について雑多に書いていくブログです。

フリーランスはリスクヘッジにお金がかかる

フリーランス会社員の1.5倍くらいもらってトントンと言われる

フリーランスで働く場合、会社員時代の給料の1.5倍くらいのもらうことでトントンと言われることはよくあります。
それは会社員には

  • 有給休暇
  • 社会保険の折半
  • 福利厚生

など、給与や賞与以外にも金銭的にプラスになっている部分があるからです。
例えば有給休暇は20日間付与されていれば営業日としては約1ヶ月分なので、実質11ヶ月の稼働で年収分の給与をもらっていることになります(全部使えばですが)。
また、社会保険は会社と折半されているので、自分の給料から天引きされている保険料は半分の額です(つまりフリーランスになると払う額が倍になります)。

実際このあたりを考慮した単価で交渉することが多いですし、相場としても同レベルの会社員よりも高くなる傾向があります。
そのためフリーランスは収入が増えるように見えることがあります。

会社員より見えないマイナスがある

しかし、フリーランスは前述の給与(フリーランスで言うと売上)以外のプラスが全くないので、その分実質的にはマイナスになる部分があります。

休めば一切収入が入らない

当然ですが、有給がなく稼働時間が減ればその分のお金は入らないので(減り方は契約次第)、もし1ヶ月休んだらその間は全くお金が入りません
計画的な休みならいいですが、体調を崩して働けなかったり、事故にあって1ヶ月入院しなければならないとなったらお金は減る一方です。

また夏季休暇や特別休暇なようなものもないですし、育休などももないので必要な場合は収入がなくなる前提で休みを取る必要があります。

傷病手当もない

傷病手当は、病気や怪我で働けなくなった時の生活を保証してくれる制度です。

www.kyoukaikenpo.or.jp

会社員や公務員が加入している健康保険にはこの制度があり、簡単に言うと働けなくなってから最大1年6ヶ月の間は収入の2/3の額が支給されます(詳しくは上記のサイト参照)。
しかし、フリーランスの人が入っている国民健康保険では、この制度はありません。

そのためもし重い病気や怪我になり、長く働けなくなってしまった場合はずっと収入がなくなります
障害等級が認定されれば障害者年金は出ますが、それも申請できるようになるまで初診日から1年6ヶ月かかります。

年金は国民年金のみ

また、年金は国民年金のみになります。
厚生年金がない分、将来もらえる年金の額は減ります

もちろん納める金額も少なくなるので、その分のお金を貯めておくことはできます。
しかし、厚生年金は労使折半で企業が半分支払ってくれているので、一応コスパは良いです。
そして年金は受給開始から生きている間はずっともらい続けられるので、長生きすればするほどその差額による得度が上がる面もあります。

そのため何歳まで生きたいかなどの考え方によって損得の感覚がわかれますが、国民年金だけになってしまうのは将来的にマイナスの可能性があります。

自分でお金をかけて対策する必要がある

これらの問題に対処するために、お金をかける必要があります。

貯蓄を多めに作っておく

まずはシンプルに貯蓄を大目に作っておくことです。
急に病気で1ヶ月休まなければならないことになった時などに、使えるお金として作っておきます。

年に1ヶ月くらい休んでバカンスに行きたいので、毎月その分を貯めておく、というやり方もできます(自分で擬似的に有給を作るような感覚ですね)。
ライフプランとしていつ頃子どもができる、という想定のある方はそこに向けて育休の代わりにその間の生活費を貯めておく、ということもあるかもしれません。

また、フリーランスで業務委託契約で働いていると、急な案件終了などもありえます。
次の案件を見つけるまでに間が空いてしまう可能性もあります。
一定期間の契約で働いている以上、いきなり収入がなくなることは常々起こり得るので、そういうリスクも踏まえて多く貯めておくことが大事です。

民間の保険に多めに入る

傷病手当がないことへの対処として、民間の保険に会社員の時よりも多めに入るという手があります。
例えば就業不能保険は、働けなくなった時にお金が継続的に給付される保険で、傷病手当を補うものとしてはうってつけです。
「働けなくなった」状態は、障害等級や要介護度を見て判定されるものが多いです。

また、一時的なものだとしても入院したりすると収入がなくなる&医療費がかかるのダブルパンチが来ます。
そのためよくある「入院1日◯円」といった形で給付される医療保険にも、少し多めに入っておいた方がいいかもしれません。
私は会社員時代は安い都民共済にだけ入っていましたが、フリーランスになってから他のものも追加しました。

iDeCoの掛け金を増やす

iDeCoは掛金の上限額が、会社員とフリーランスで変わります。
会社員(第2号被保険者)は最大2.3万、自営業であるフリーランス(第1号被保険者)は6.8万まで毎月拠出でき(2025年2月11日時点)、4.5万円の差があります。

前述の通りフリーランスは厚生年金がない分公的年金への支払いが少ないので、その分をiDeCoの掛金へ回すとちょうどいいと思います。
厚生年金のようにもらい始めてから一生出続けるものではありませんが、それでもしっかり運用していれば80代まで生きたとしても十分カバーできるくらいには貯められると思います。

税理士と契約する場合はそちらのお金もかかる

収入を補うものとはまた別の話ですが、確定申告や税務周りを間違いなくやっていくために、私は税理士と契約しています。
正直フリーランスエンジニアの事業は1〜2つの取引先から月1回入金されるだけだったり、仕入れなどがあるわけじゃないので経理はそこまで複雑じゃなく、自分で確定申告するのもできます(面倒ですが)。

しかし、申告が間違っていたら追加徴税で上乗せして払う必要があったり、リスクは存在します。
特に年収1000万以上の人は税務調査の声をかけられるリスクがあると言われており、帳簿のつけ方や書類の管理なども含め、より間違いなくやっておく必要があります。

もちろん税理士がいるから100%なにも起こらないわけではないですが、大幅にリスクは軽減できます。
併せて確定申告の作業も自分でやる必要がなくなるので、毎年の年度末に慌ただしくなったり面倒なことをやらなくて済むようにもなります。

また、税務周りの作業は法律のこともよく気にしておかなければなりません
最近でも電子帳簿保存法やインボイス制度などフリーランスにも影響のある話がありましたが、こういったことも税理士がキャッチアップして必要な対応を指示してもらえます(その手続も代行してもらえます)。

なので法律を知らずにやらなければならないことをやっていなかったり、申告内容が間違っていたりというリスクも減らし、さらにそういったことに対する心配事も減り心理的安全性にもつながります
収入の多い人は検討するといいでしょう。

目先の収入は増える可能性があるが、リスクとの天秤がある

結局のところ、冒頭の有給休暇や社会保険の話なども加味して目先の収入が増えることは多いです。
しかし、その分リスクは増えるので補おうとするとお金がかかりますが、もしやらない場合は収入とリスクの天秤になります。
どこまで補おうとするかによっては、実際の手取り的な金額でいうとそんなに変わらない場合もあるかもしれません。

ただ、そこでどちらを取るかという選択肢を持てるのはいいことだと思います(会社員の場合は自動で引かれてリスクヘッジされるのみなので)。
万が一のことはあまりに気にせず、目先で増えた分を投資に回して資産を増やし、最悪なにかあったら崩すという考え方もできます。

私は心配性なのでリスクを減らして心理的安全性を確保したくて色々と使っていますが、人それぞれ最適な使い方があると思います。
こういう選択肢すら考えるのが面倒くさいという場合は、会社員の方が楽な場合もあるので、自分に合う方を選ぶのがいいでしょう。